
今日はウイスキーの「樽」の話かぁ~。
重要なんだろうけど、よくわからないんだよね。。



樽は、ウイスキーの味わいに与える影響は大きいからね。
わかりやすく、深く解説していくよ~。
「樽がウイスキーの味わいのほとんどを決めている。」
こう豪語してしまいたいほど、樽がウイスキーに与える影響は大きいです。
ウイスキーを語るときに樽が語られることが多いと思いますが、その内容を理解するのはなかなか難しいでしょう。
そこで今回わかりやすく樽について解説していこうと思います。
樽を理解するとウイスキーがもっと楽しくなるので、ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです。
合わせて読みたい⇨ウイスキーの熟成について|瓶内でも熟成される?樽熟成とは?
- 樽の概要
- ウイスキー樽の特徴
- 樽熟成させる意味
ウイスキーの「樽」について


ウイスキーは、樽の中で過ごす時間が最も長いです。
最低でも3年。中には数十年も過ごすものも……
それだけ、樽はウイスキーの味わいに大きな影響を与えています。
特に、ウイスキーに使われる樽は法律で指定されている国もあるほど、ウイスキーにとって重要なものなのです。
【ウイスキー主要国の決まり】



国名をタップすると詳細が見れるよ!
スコットランド
スコッチウイスキーは……
- 700ℓ以下のオーク製の樽
- 3年以上の熟成
が決まりとなっていて、ほとんどはバーボンの空き樽(バーボン樽)で熟成されます。
伝統的なスコッチは、シェリー酒の空き樽(シェリー樽)です。
他にも細かい決まりがあり、例えば……
- ジンなど香りづけされたお酒
- ももや梅、アンズなど(核果)のお酒
- リキュール、梅酒などの甘味が加えられたお酒
で使われた樽は使用できないこととなっています。
アイルランド
アイリッシュウイスキーは……
- 700ℓ以下の木製の樽
- 3年以上の熟成
スコッチウイスキーと違い、アイリッシュウイスキーは木材の指定はありません。
オーク製の樽でなくても、木製の樽であればOKです。
アメリカ
アメリカンウイスキーはバーボンウイスキーがメイン。
バーボンウイスキーは……
- 内側を焦がしたオーク製の新樽
- 熟成が義務だが、熟成年数の決まりはない
バーボンは唯一「内側を焦がした新樽」と細かい規定があります。
かなり樽のニュアンスは強く出るのですが、それがバーボンの大きな特徴です。
カナダ
カナディアンウイスキーは……
- 700ℓ以下の木製の樽
- 3年以上の熟成
樽熟成に関しての決まりは、ほぼアイリッシュウイスキーを一緒です。
ただ、ステンレスタンクなど木樽以外の熟成も定められた期間(6か月以内)なら熟成期間に含めることができます。
日本
ジャパニーズウイスキーは……
法としての決まりは特にないです。
ただ、民間組合(日本洋酒酒造組合)の自主基準によると……
- 700ℓ以下の木製の樽
- 3年以上の熟成
樽熟成に関しては、アイリッシュウイスキーと同じです。
樽を少しだけ深く知ることで、ウイスキーのことがもっとわかりやすくなり、楽しくなるはず!
そこで今回、ウイスキーの樽について深く解説していこうと思います。



樽の中にも3年っていうもんね。



石の上にも三年……な。。
ウイスキーといえば樽熟成がマスト。
ただ、ウイスキーが樽熟成されるようになったのは、500~800年以上もの歴史があるウイスキーの中でも、たった200年ほどです。
それまでは、無色透明なウイスキーが飲まれていました。
そんなウイスキーの樽熟成の歴史を少しおさらいしていこうと思います。
樽熟成の始まり


ウイスキーの樽熟成の始まりは、1800年代。
当時のスコットランドはイングランドの支配下にありました。
特にウイスキーには重税が課せられていたため、多くの蒸留所はウイスキーを密造していました。
今でこそ有名銘柄となっているウイスキーも密造酒だったものは多いです。



オイラでも何となく聞いたことある銘柄!
定期的にイングランドからの税務官などが取り締まりに来るため、作った密造酒を隠さないといけません。
その時役に立ったのが「シェリー運搬用の樽」でした。
イギリスは今でもシェリー酒の主要消費国で、当時シェリー酒は木製の樽に詰めてイギリスに運ばれていました。
シェリー運搬用の樽はワンウェイ樽で、一度運ばれたら回収されることはなく、イギリス中の主要港には使用済みとなった樽が転がっていたそうです。
密造家たちが、その樽で作った密造酒を隠していたら……
なんと芳醇な香りを放つ琥珀色のウイスキーが誕生していたというのが、ウイスキーの樽熟成の始まりといわれています。
詳しくは⇨ウイスキーの樽の歴史。琥珀色の美酒はこうして生まれた



このストーリーには、イングラントへの反抗心も含まれているみたいだね。
現にブランデーではもっと前に樽熟成の有益性が確立されていまそうですし……。



ウイスキーにも悲しい歴史があるのね。。
木樽で熟成させる意味


ウイスキーを樽熟成させる意味は大きく2つあります。
- ウイスキーに樽が溶ける!
- 樽が呼吸する!



ちょっと何言ってるかわからない……。



だよね。
詳しく解説するよ!
ウイスキーに樽が溶ける!?
樽熟成することで、ウイスキーに樽の成分がどんどん抽出されていきます。
まさに樽がウイスキーに溶けていくように……。


樽の成分は、新しい樽や後で解説する「チャー」や「トースト」という加工をするほど出やすくなります。
数回使いまわされたウイスキー樽は、もう一度内側を焦がす(チャーやトースト)をして再活性化。
樽の成分がほとんどでなくなるまで(数十年ぐらい)、何回も使いまわされます。
樽の成分の抽出で、重要になるのが「アルコールと水分」。
アルコールによって樽の成分が抽出されたり、水分に樽の成分が溶けだしたり……
樽の中では、複雑に香りや味わいに影響を与える成分がウイスキーに溶けていっています。
人々を魅了するウイスキーは、こうして生まれていくのです。



なるほど、「ウイスキーに樽が溶ける」っていうのは、純粋に樽の成分がウイスキーに抽出されていくってことね!



そういうこと!
アルコール度数の高く長い熟成期間のあるウイスキーは、まるで「樽が溶ける」って表現が合うほど成分が抽出されるんだ!



超長期熟成のウイスキーにあると……
「古びたアンティーク家具をかじっているような」なんてコメントがされるものもあるんだ。(笑)



アンティーク家具は飲みたくないな~。。。
樽が呼吸する!?
ウイスキーでなぜ木製の樽が使われるか。
上で解説した樽の成分をウイスキーに抽出するためというのは何となく想像できると思います。
もう一つ大きな木製樽のメリットは、「呼吸ができる」ことです。
どういうことかというと……
木材を組み合わせて作られる樽は、気温や湿度の違いによって小さな隙間ができたり閉じたりします。
樽の内から未熟香な香りやアルコール・水分が蒸散したり、外からの空気が樽内部に入ってきたり……


樽の中では、ものすごくゆっくりと勝手に換気がされているわけです。
ウイスキーにあるフレーバーも一部こういった樽の呼吸によって得られるといわれているものもあります。



樽が想像の10倍も高性能でびっくりしたよ。



ウイスキーにある「ソルティ」なフレーバーは、熟成中に外気からもたらされるものも代表格って言われているね!


ウイスキー樽の特徴
ウイスキーの熟成樽には3つの特徴があります。
- 他のお酒に使われていた樽が使われることが多い
- 樽の材質はほぼすべて「オーク製」
- 内側を焦がす加工がされている
それぞれ解説していこうと思います。
ほかのお酒に使われていた樽
バーボンウイスキーなど新樽の使用がマストとなっているウイスキー以外は、ほかのお酒で使われていた樽が使用されることがほとんどです。
特に多いのが……
- バーボンの空き樽⇨バーボン樽
- シェリー酒の空き樽⇨シェリー樽
バーボンウイスキーは新樽の使用がマストと書きました。
その使われていた樽はスコッチウイスキーやアイリッシュウイスキー、ジャパニーズウイスキーなどの熟成に使われることがほとんどです。
バーボンの熟成に使われていた樽は、特にしっかりとバーナーで焦がされたものが多く、バニラ香やバナナ香といった香りが得られやすいといわれています。
長期熟成のボトルだとトロピカル香やクリーミーなニュアンスが感じられることも……。
比較的ライトなテイストのウイスキーが多いです。



俺はバーボン樽熟成のウイスキーが好きだな~。



特徴を聞いているだけで飲みたくなってくるよ
対してシェリー樽は、ドライフルーツや紅茶、チョコといった重ためなテイストとなりやすい傾向があります。
シェリー酒とは、スペインで作られている酒精強化ワイン(ワインを発酵・熟成させて酒精(スピリッツ)を添加したワイン)の事。
スコッチウイスキーでは、伝統的にシェリーの空き樽が使われてきました。



時々、めっちゃシェリー樽熟成のウイスキーが飲みたくなるんだよね~。



その感覚、まだわかんないや。。


樽の材質
ウイスキーに使われる樽の材質は、ほとんどが「オーク製」です。
オークはブナの仲間で、ウイスキー樽以外にも家具や木造船舶などに使われています。
一言でオークと言えど種類はさまざま……
ウイスキーで覚えておきたいオーク材は3つです。
- ホワイトオーク
- コモンオーク
- ミズナラオーク
この3つのオーク材について、詳しくはこちらの記事にまとめました。
特徴や違いが分かりやすいウイスキーなどもっと知りたい方は下の記事をご参照ください。
合わせて読みたい⇨ウイスキー樽の種類とは?それぞれの特徴を知るともっとウイスキーが楽しくなる。
ウイスキー樽は、内側を焦がす!
ウイスキーの樽は、内側を焦がした加工をすることがほとんどです。
木材を焦がすことで、生木の不快な香りを抑えることができ、ポテンシャルを引き出しやすくすることができます。
内側をしっかりと焦がした樽からは、バニラ香やトースト香などの香りと色がウイスキーに移りやすいです。
その内側を焦がす加工には2つのパターンがあります。
- バーナーで一気に炙て焦がしていく⇨チャー
- 遠赤外線でゆっくり焦がしていく⇨トースト
チャーはバーボンなどでよく行われている加工で、焦がせば焦がすほど樽のニュアンスが強く出るようになります。





火、つよ!!
炙ってるっていうより燃やしてるでしょ。



めっちゃ強いよね!
中にはもっとすごいバーナーで一気に炙る蒸留所もあるんだよ。
対してトーストは、遠赤外線でゆっくりと焦がしていく方法です。
ゆっくり加熱されることで深くまで焦がされていきます。
バニラ香も得られますがチャーほど強くなく、キャラメル香などのまったりとした甘い香りが得られやすいです。
チャーとトーストのどちらかだけ行った樽もあれば、両方とも行った樽もあります。
主にワインの熟成に使われている樽はトーストされることが多く、バーボン樽はチャーのことが多いです。



トーストは何となくわかるけど、チャーって言葉なじみがないから難しいよ



チャー(Char)は、「黒焦げにする」という意味の英語なんだ。
トースト(Toast)は「きつね色にこんがりと焼く」ってニュアンスだからこの違いを知るとわかりやすいかも。
木製樽、なぜ漏れない??



そういえば、何で木製の樽が漏れないんだい?



まさに「職人の技」だよね。



一言で片づけようとしないで、説明してよ~
木製の樽に何年もウイスキーを入れていても、漏れずに使うことができることって不思議じゃないですか?
すごいマニアックに説明すると……
- オーク材の特性
- 特殊な木材の切り方
- 木材の組み方
などなど
強固で堅牢なオーク材と職人の技術が組み合わさることによって、長年ウイスキーを入れても液漏れしないようになっています。
オーク材は、古来より木造船にも使われてきたほど耐久性と堅牢さに優れた木材です。
特にウイスキー樽の主流である「ホワイトオーク材」はオークの中でもまっすぐ生える特性があります。
なので、ウイスキー樽には最適なのです。
またオーク材を、ウイスキー樽用には「柾目板」が使用されます。


ウイスキーには、贅沢に木材を使った柾目板が使われています。
柾目板は、板目板より数が取れず高価になってしまいますが、伸縮や膨潤が小さくて反りや狂いが起きにくいです。
反りや狂いが生じると液が漏れてしまう可能性があるため、長期間ウイスキーの熟成に使用する樽には柾目板が使用されます。
そして、こだわりの木材を職人が樽として組んでいきます。
木板を湾曲した形に板を加工。
隙間なく樽の形に組んでいきます。
木材選びから、木材の切り出し方、樽の組み立て方まで、様々な職人の手によって強固な樽が作られていくのです。



真ん中が膨れた樽の形にするためには、側面の板はフットボール型のようにしないといけないんだ。



へぇ~!それで、ウイスキーが漏れずに隙間なく作り上げるなんて職人芸だね!
ウイスキー樽は使いまわされる!?
ウイスキーの樽は、大体10~15年周期で使われるといわれています。
そして多くの樽は、60年ほど。
様々なウイスキーが詰められ、再びチャーやトーストを行い再活性化して寿命まで何回も使われます。
- 新樽
- 1stフィル
- 2ndフィル
- 3rdフィル
……
- プレーンカスク
使われた回数に応じて呼び方が変わっていきます。
そして何回も使われた樽は「プレーンカスク」と呼ばれ、この樽で熟成されたウイスキーには、樽のニュアンスはほとんど出ません。
主にブレンデッドウイスキー用のグレーンウイスキ―に使われることが多いです。


また何度も使われた樽を再びチャーやトーストをするとまた樽の成分がウイスキーに出やすくなります。
こういった樽は「再活性化樽(リフィルカスク)」と言います。



ウイスキーのラベルに「1st fill Bourbon Cask」って書かれていることがあるんだけど、見たことある??



そこまで詳しく見たことないよ~。。
なんかあったような気もするけど……



バーボンを払い出した後すぐのバーボン樽に詰めて熟成されたって意味なんだ。ウイスキー愛好家は、これで大体の味の想像ができるようになるんだよ。



何それ!!かっこいい!!
オイラもできるようになりたい!
最後に……


「樽の中は小宇宙」
なんていう人もいるほど、ウイスキーの樽熟成は神秘に包まれています。
僕みたいにウイスキーを少し勉強した程度では、語るのがおこがましいほどです。
ただその中でも皆様に少しでも魅力が伝えられたらと思い、この記事を書きました。
今回は……
- 各国の樽の決まり
- 歴史
- 樽熟成させる意味
- ウイスキー樽の特徴
を中心に広くちょっとだけ深く解説させて頂きました。
少しでもウイスキーの樽の魅力が知れて、ウイスキー選びの参考になっていただけたらと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!
また次回もよろしくお願いいたします。
よいウイスキーライフを
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コメント
コメント一覧 (4件)
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