
樽の概要だけでもマニアックだったのに、樽の種類なんて……。
今日は絶対にマニアックだ。。オイラついていけるかな。。



大丈夫!
ここがわかるとウイスキーがめっちゃ楽しくなるからわかりやすく解説していくよ!
ウイスキーの味わいの決め手となる「樽」。
ウイスキーの熟成に使われる樽にはさまざまな種類があり、どの樽で熟成させたかによって大きく味わいが変わります。
ただ、どうしてもマニアックな世界なので、ウイスキー好きな人しか樽の種類までは注目しないでしょう。
樽の種類の違いを知ると、記載されている樽の種類と熟成年数を見るだけである程度の味わいは想像できるようになります。
自分の好みのウイスキーが見つけやすくなり、よりウイスキーが楽しくなるはずです。
今回はそんな樽の種類についてわかりやすく、詳しく解説していこうと思います。
- 樽の種類
- 樽の材質による違い
ウイスキーの樽の種類


ウイスキーのほとんどは、何か別のお酒が入っていた樽で熟成されます。
特に……
- スコッチウイスキー
- アイリッシュウイスキー
- ジャパニーズウイスキー
では、ほとんどが何かのお酒に使われていた樽です。



ウイスキーには、リユースの精神があるんだね。



実は、そういうわけではないんだ。。
味わいをつけるためにあえてやっているんだよ。
どのお酒が入っていたかによって、その後のウイスキーに大きな影響を与えるので、意図的にそういった樽が使用されます。
実際にウイスキーの熟成に使われる樽は……
【よく使われる樽】
- 新樽
- バーボン樽
- シェリー樽
【珍しいけど使われる樽】
- ビール樽
- ワイン樽
- ブランデー樽
- ラム樽
【使えるようになった樽】
- テキーラ樽
- 焼酎樽
などなど



こんなにいっぱいの樽の種類があるんだ~。



最近、樽の法律が明確になって使える樽が増えたんだよ
新樽


まだ何も使われていない新しい樽のことを「新樽」と言います。
バーボンウイスキーやテネシーウイスキーなどでは、新樽の使用が義務です。
新樽は、樽の成分が良くウイスキーに出やすくなります。
新樽で熟成させたウイスキーは、樽由来の香りや味わい・色が濃いです。
バーボンウイスキーを飲んでみるとわかりやすいですが、ウッディな香りを強く感じると思います。
新樽は、樽の香り・味わいが強く出る分、熟成のピークが早いです。
【新樽の特徴】
- 樽由来の香り・味わい・色が強く出る。
- 熟成のピークが早い。
- バーボンやテネシーなどでは使用が義務。


- バーボンにしては長めの熟成期間
- 樽のウッディさ・バニラ香が良く出たウイスキー
- アルコール度数が高く、香味が豊か
- 強い樽香が苦手な方には、おすすめできない
- アルコール度数が高く、慣れていないとストレートはきついかも
バーボン樽


バーボン樽は、バーボンウイスキーが入っていた樽のこと。
バーボンウイスキーは、内側を焦がした新樽で必ず熟成されます。
チャーというバーナーでがりがりに樽の内側を焦がす加工をすることで、樽の成分がよりウイスキーに出やすいです。
一度使ってしまうと、バーボンウイスキーには使うことができないので、他のウイスキーやラムなどの熟成樽に使用されます。
今、スコッチウイスキーを含む多くのウイスキーは、バーボン樽熟成。
新樽のニュアンスが出にくく、バニラやハチミツ、バナナといったフレーバーが特徴です。
比較的ライトな酒質のウイスキーになりやすく、バーボン樽で長期熟成させているウイスキーはたくさんあります。
また、最近よくウイスキーで使われている「ウッドフィニッシュ(追加熟成)」をする前に、バーボン樽で熟成させているケースも多いです。



バーボンがガンガン新しい樽を作っていくからほかのウイスキーで、使っているって感じ?



バーボンなどアメリカンウイスキーで新樽を使うのは、樽ビジネスの一環とも言われているね。
もちろん味わいの面もあると思うけど……。



なんか急に大人な世界になってきた……
【バーボン樽の特徴】
- バニラ、バナナ、はちみつといったフレーバーが得られる。
- 比較的ライトな酒質。
- 多くのウイスキーがバーボン樽で熟成されている。


- 3000円台とリーズナブルなシングルモルト
- ライトでクセのない
- フルーティで華やか
- スモーキーさやパンチが欲しい人には、向いていない
シェリー樽


シェリー樽は伝統的にスコッチウイスキーで用いられてきました。
シェリー酒という酒精強化ワインに使われていた樽で、ドライフルーツや紅茶、チョコ、レーズンといったフレーバーが特徴です。
もともとシェリー酒は運搬用の樽に詰めて、スペインからイギリスに運ばれていました。
その運搬用の樽は、もう一度スペインに戻ることのないワンウェイ樽です。
ウイスキーの樽熟成は、このワンウェイ樽にウイスキー(当時は密造酒)を詰めて隠していたら熟成されていたという話から始まったといわれています。
関連記事⇨ウイスキーの樽の歴史。琥珀色の美酒はこうして生まれた
今では、シェリー酒を樽で運搬することができなくなってしまいました。
そのためウイスキー蒸留所は、自分たちで用意した樽をシェリー酒の熟成庫で一定期間シェリーシーズニングしてもらってウイスキーの熟成に使っています。
実は、シェリー樽は今も昔もシェリーの熟成に使われていた樽ではなく、こういった少しの期間シェリー酒を入れていた樽が使われています。



何でシェリー樽は熟成に使われていた樽じゃないの??



実は、シェリーの熟成は、大雑把に言うと継ぎ足し方式みたいなソレラシステムって方法なんだ。
中には百数年単位で使われる樽もあるんだよ。



人の一生よりも長く使われている樽があるんだ!!
シェリー酒、すごすぎる。。



だからウイスキーの熟成用に回されるシェリーの熟成樽は手に入らないんだよ。
【シェリー樽の特徴】
- ドライフルーツや紅茶といった香り・味わいが得られる。
- 色が濃く出やすい。
- 特にスコッチウイスキーに多い。


- ドライフルーツやレーズンといった深いコクのあるフレーバー
- 甘いけど少しビターさもあり、大人な味わい
- 口当たりが重たすぎない
- ハイボールや水割りだと良さが薄れる
ワイン樽


ワインの熟成に使われていたワイン樽。
ワイン樽にもいくつか種類があり……
- 白ワイン
- 赤ワイン
- ポートやマデイラなど酒精強化ワイン
- ソーテルヌなどの甘口ワイン
などなど
中でも特にウイスキーに使われることが多いのは、シェリー酒と同じ酒精強化ワイン。
酒精強化ワインの樽は、シェリー樽おなじようにドライフルーツや紅茶、チョコなどの深いコクのあるフレーバーが特徴です。
他にも、それぞれどの樽を使ったかによって個性が変わります。
- 赤ワイン……ベリー系のフレーバー
- 白ワイン……フレッシュな白ブドウのニュアンス
- ソーテルヌ……シャインマスカットのニュアンス
ただワイン樽自体は、メインの熟成に使われることがあまりありません。
ブレンドするためのアクセントの原酒用だったり、ウッドフィニッシュ(追加熟成)で使われたりすることがほとんどです。



確かに、ワインの樽で熟成させたウイスキーってあまり聞かないね。



実は、みんなが知っている「山崎」が赤ワイン樽熟成のモルト原酒を主軸にしているんだよ。



え!!山崎がそうなんだ!!
【ワイン樽の特徴】
- ベリーやブドウといったフルーティなフレーバーになりやすい。
- 個性は多彩だけど、メインの熟成に使われることは少ない。
- ブレンドのアクセントやウッドフィニッシュで使われる。


- 甘くて、上品な口当たり
- 女性にもおすすめしやすい
- ウイスキーに強い酒屋さんやネットでないと入手できない
ビール樽


ビール樽熟成のウイスキーはあまりありませんが、試験的にビール樽熟成のウイスキーがリリースされることがあります。
定番リリースされているビール樽熟成のボトルは「ジェムソン スタウトエディション」ぐらい。
ジェムソン スタウトエディションは、黒ビールの樽で熟成させたアイリッシュウイスキーです。
すっきりとした味わいの中に香ばしいコクのあるフレーバーが楽しめます。
他には、IPA(インディアペールエール)の樽で熟成させたウイスキーがあり、こちらは後味に少しさわやかな苦みがあることが特徴です。
どちらもビール樽はウッドフィニッシュ以外で使われることはほとんどありません。



ところで、IPAってなんだい??



大雑把に言うと、ホップを大量に使ったビールのことだよ。



なるほど。。すごく苦そうだね。。



苦いけど、爽やかな香りとエールビール特有のフルーティさが特徴なんだ。
【ビール樽の特徴】
- 黒ビールなら香ばしいコク、IPAならほのかにホップのニュアンス。
- ウッドフィニッシュ以外で使われることはない。
- 試験的に作られるボトルが多い。


- 飲みやすく、バランスがいい
- スッキリとした味わいの中に、香ばしいフレーバーとコク
- 数少ないビール樽熟成の定番ウイスキー
- 熟成年数が短く、ストレートだと荒さを感じる人も……


ラム樽


ラム樽の特徴は、甘く芳醇な香りがあること。
中には、少し青草っぽい印象を受ける銘柄もあります。
主にダークラムの熟成に使われていた樽が多く、ラム酒由来の甘みやレーズンを感じさせる銘柄が多いです。
ラム樽も、ビール樽やワイン樽同様にウッドフィニッシュ以外で使われることはほとんどありません。
またラム樽熟成のボトルも少ないですが、最近になって有名なブランドや蒸留所がラム樽フィニッシュの銘柄を数多くリリースしています。
今後定番リリースのラム樽も増えてくるかもしれませんね。



そういえば、ラム酒もよく聞くけど、詳しくは知らないお酒だよな



ラム酒は深い歴史と、ウイスキー以上に高い自由度があるから面白いよ~



ラム酒についてもすごく気になってきた……。


【ラム樽の特徴】
- 甘く、芳醇な香りのものが多い。
- ウッドフィニッシュ以外で使われることはほぼない。
- 近年、よくリリースされている。


- ライトで飲みやすいけど、甘くフルーティ
- バランスがいい
- ハイボールが特に飲みやすい!
- ストレートだと荒さが目立つかも……
ブランデー樽


ブランデー樽もまたあまり見かけないですが、時々ウイスキーのウッドフィニッシュで使われます。
ブランデーは果物原料の蒸留酒のことで、ウイスキーの熟成樽に使われるブランデーは……
- ブドウ原料
- コニャック
- アルマニャック
- リンゴ原料
- カルヴァドス
などがあります。
ブランデーの樽で熟成させたウイスキーは、華やかなフルーティさを感じる銘柄が多いです。
ただ、ブランデー樽自体がかなりマニアックで、蒸留所などのオフィシャルリリースはあまりされません。
ボトラーズというオフィシャル以外からリリースされることが多いです。
関連記事⇨「インディペンデントボトラー」「ボトラーズ」とは? 特にマニア向けのおすすめボトラーズ・ウイスキーを厳選!
【ブランデー樽の特徴】
- 華やかでフルーティな香りが付きやすい。
- あまりリリースされることがない。
- ほとんどがボトラーズでのリリース。


- リーズナブルなコニャックカスク
- ほどよい熟成感
- フルーティさと深みのあるフレーバー
- 限定リリースのため、いずれ無くなってしまう
その他の樽


シングルモルトやクラフトウイスキーが世界的なブームとなり、ある問い合わせが増えることとなりました。
それは……
「スコッチウイスキーに使える樽の範囲はどこまで?」
ということ。
今までは、ワイン樽ならブルゴーニュやソーテルヌなどならOKでしたが、チリ産ワインの樽はなんとなくNGでした。
2019年、使用できる樽がスコッチウイスキーの法で明確になったのです。
スピリッツは、オークの新樽や、ワイン(無発泡性ワインおよび酒精強化ワイン)、ビール(エール)、スピリッツ類などの熟成に使用したオーク樽に入れて熟成されるものとする。ただし下記の酒類を熟成したオーク樽は除外する。
- 原料に核果(サクランボや梅のような果物)が含まれるワイン、ビール(エール)、スピリッツ
• 発酵後に果実、フレーバー、甘味が加えられたビール(エール)
• 蒸溜後に果実、フレーバー、甘味が加えられたスピリッツ
• 上記の製法を伝統的に採用しているワイン、ビール(エール)、スピリッツ使用する樽の種別に関わらず、完成された製品はスコッチウイスキーの伝統的な色、味、アロマの特徴を示していなければならない。樽に入っていた内容物は、スコッチウイスキーまたはスコッチウイスキーとなる予定のスピリッツを容れる前に完全に排出されなければならない。
(※スコットランドの飲料に関する検証機構:技術指導書(スコッチウイスキーの検証)2019年6月改定)
つまり、わかりやすく言うと……
【OKな樽】
- 上記した樽
- テキーラ樽
- 焼酎樽
- 日本酒樽
など
【NGな樽】
- ジンの樽
- リキュール樽
- チェリーブランデーの樽
- 梅酒樽
- サングリア樽
- フルーツビール樽
など
この決まりができてから、徐々に面白い樽を使ったウイスキーもリリースされています。
材質で分けるウイスキー樽の種類


ウイスキーの樽のほとんどは、オークが使われます。
ただ、一言でオークといっても種類はさまざま……。
そこで主にウイスキーで使われているオーク材は、
- ホワイトオーク
- ヨーロピアンコモンオーク
- ミズナラオーク
それぞれオーク材の種類を解説していこうと思います。
ホワイトオーク


ウイスキー樽によく使われる代表的な品種です。
木目がまっすぐ(通直性)があり、木材として使いやすい上に強度にも優れています。
バーボンウイスキーやシェリー、ワインなど幅広い用途で使われていて、現在スコッチウイスキーの9割はホワイトオーク製の樽だそうです。
代表的なのは「アメリカン・ホワイトオーク」
比較的安価で、液漏れしにくいです。
また、タンニンが少なくバニラ香が付きやすい特徴があります。



バニラ香のつきやすさはチャー(バーナーで内側を焦がす)ことによる影響が大きいね。
【ホワイトオークの特徴】
- 比較的安価で、液漏れしにくい
- タンニンが少なく、バニラ香が付きやすい。
- ウイスキーでは主流。他のお酒でも幅広く使われている。


- フルーティで飲みやすい
- バランスが良く、飲み方を選ばない
- 樽由来のバニラ香がとにかく上品
- スモーキーな香りが欲しい人にはおすすめできない
コモンオーク


ヨーロピアンオークの代表格が「コモンオーク」です。
イギリスでは「樹木の王」「森の王」とも言われています。
古くからコニャックやワインなどの熟成に使われていて、タンニン量が多く重厚な味わいになりやすいです。
ウイスキーに使われる樽は、スペイン産のスパニッシュオークのシェリー樽が多いですが、現在は入手困難となっています。
なので、ウイスキー蒸留所各社は自分たちでスパニッシュオークの樽を用意してシェリー酒をシーズニングしています。



シェリー酒を樽で輸送することができなくなったことが原因。
そもそもシェリー熟成用の樽はホワイトオークが主流だしね。



ウイスキーの伝統的な樽を守るのは、大変なんだね~。



しかも、ウイスキー用にシーズニングに使われたシェリー酒は「シェリー酒」と呼べない代物となってしまうんだ。



なんか、スゴイ矛盾。。
【コモンオークの特徴】
- 高価になりやすく、ホワイトオークより樽加工が少し難しい。
- タンニンが多く、重たい味わいになりやすい。
- ウイスキーの熟成に使われることも少なくなってきた。


- 深いコクのあるフレーバー
- シェリー樽の特徴がわかる
- オフフレーバーが気になる
- 価格が高い


ミズナラ


ミズナラは日本原産のオーク材です。
北海道、樺太、中国東北部に広く分布していて、明治時代以降は建築材としても使われていました。
ホワイトオークに比べて通直性が悪く、捻じれて生長する特徴があります。
そのため樽加工が難しく、水漏れしやすいため「水楢(ミズナラ)」の名前がついたそうです。
ミズナラは、独特な香りが付くことが特徴で、白檀(ビャクダン)や伽羅(キャラ)といった香りが付くといわれています。



びゃくだん?きゃら?オイラよくわからないよ。



なかなか難しいよね。。
高級なお線香とか、お寺の香りが近いかなぁ~
少しさわやかな甘い香りだよ。
【ミズナラの特徴】
- 樽加工が難しく、かなり高価になりやすい。
- 白檀や伽羅といったオリエンタルな香りが付きやすい。
- 世界中で注目されているが、ミズナラ樽自体が希少。


- 華やかでフルーティ
- ミズナラ由来のふくよかなフレーバー
- バランスが良く飲みやすい
- 12年物ブレンデッドウイスキーにしては高い
その他の木材(栗・桜など)


スコッチウイスキーやアメリカンウイスキーでは「オーク製」の樽をつかわないといけません。
ところが、アイリッシュウイスキーやジャパニーズウイスキー、カナディアンウイスキーなどでは、木製の樽であれば、オーク製でなくてもOKとされています。
オーク製の木材以外では、
- 栗
- 桜や山桜
- 杉
などの木材が試験的に使われています。



杉は、杉すぎるウイスキーになっちゃっているものが多いけどね……。



ダジャレのつもりなのかな。。
最後に……


ウイスキーにはさまざまな樽が使われています。
木材の種類だけでいうと
- ホワイトオーク
- コモンオーク
- ミズナラ
- その他の木材(栗や桜など)
などがあり、他のお酒の熟成に使われていた樽が使われることが多いウイスキーは……
- 新樽
- バーボン樽
- シェリー樽
- ワイン樽
- ビール樽
- ラム樽
- ブランデー樽
どの樽で熟成させたかによって出来上がるウイスキーの味わいが大きく変わります。
かなりマニアックな世界ではあったと思いますが、今回の話でウイスキー選びがより楽しくなってもらえると嬉しいです。



難しかったな。。
でも何となく、いろんなウイスキーが飲んでみたくなったよ。



樽に注目するのがウイスキーオタクへの一歩だと思うよ。
かわず君もまた一歩、沼に沈んだね。(笑)
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